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  自然界の不思議

映画でもヒットした小川洋子さんの小説「博士の愛した数式」に、知る人ぞ知る「オイラーの等式」が登場してきたのには、びっくりさせられると同時に不思議な感動を覚えた・・「オイラーの等式」は「eのiπ乗プラス1はゼロ」という、クリスタルというよりはリリカルな美しさを醸し出している(ブログでは数式で書き表せないので凄く残念だけど)。


ちなみに、「乗」というのは「同じ数を何回掛け合わせるか」ということで、「2の2乗」とは「2を2回掛け合わせる、つまり答は4」で、「2の3乗」とは「2を3回掛け合わせる、つまり答は8」のことである。

 


ついでに言っておくと、僕たちは物事をついつい「足し算」で考えがちであるが、実は、自然界の出来事の殆どは「掛け算=乗数」で現象している・・別の言い方をすれば、自然界の現象は「直線=速度」ではなく、放物線や双曲線のような「曲線=加速度」で変化しているということである。


さて、「オイラーの等式」に登場してくる、「e」や「i」や「π」たちが「自然界の不思議」の鍵を握っている。


「e」は発見者にちなんで「ネイピア数」と呼ばれているが、「e」の秘密を解き明かしたのはオイラーであり、数学的には「自然対数の底」と呼ばれている・・そのような数学的いきさつはさておき、自然界の様々な現象の変化を記述する時に「e」は大切な役割を果たしてくれる。
自然界の動きを記述できないと、全く不可能とは言わないが、天気予報をするのにも、飛行機を上手く飛ばすのにも色々と不都合が生じてくる。


「π」は皆さんも良くご存知の通り「円周率」である・・「円周率」の発見というか確定についてはエジプトのファラオ時代からの長い歴史があるけど、「円」という「完璧な曲線=自然」のひとつを何とか「直線=人智」に変換しようとしてきた英才たちの努力には脱帽せざるを得ない。
地面に「円」を描くことは誰にも出来るけど(そこから「幾何学=Geometry=地面(Geo)を測る(Metrics)」という用語が生まれたのだけど)、それを直線で構成された建物などと組み合わせるとなると、「π」が必要不可欠になってくる・・何しろ、太陽も地球も丸いのだし。


「i」は「虚数」で、英語では「Imaginary Figure」と呼ぶ・・つまり、林檎が一個、二個と、手に触れたり目で見ながら勘定できる実際の数「実数=Real Figure」ではなく、頭の中にしか存在しない架空の数字であるから「虚数」と名づけている。
架空の数字だから僕たちには直接的な関係が無さそうに思えるけど、ところがどっこい、「i」は僕たちの生活にも身近な存在なのである・・例えば、鉄筋コンクリートのビルの構造計算にも「i」は必ず登場してきて、安全な建物を地上に構築してくれる。


「オイラーの等式」の凄さは、空想上の「記号」としか思えないようなものたちと、僕たちが即座に実感できる最も基本的な数字である「1=存在の最小単位」と「0=非存在」を見事に組み合わせてしまったことである・・「1と0」と言えば、コンピュータには不可欠の「二進法世界=ディジタルワールド」でもある。


自然界に潜んでいる、このような凄くも愛らしい「数字」については、小川洋子さんが「博士の愛した数式」の中で見事に描きだしているので、是非とも一読をお勧めする。


添付した図版は、北斎の超有名な「神奈川沖浪裏」であるが、北斎の凄いところは、「浪」の中に潜んでいる、「e」や「π」や「i」を直観的に見抜いて見事な浮世絵に仕立て上げたことである・・北斎が「超越した数学者」であったのか、オイラーが「卓抜した芸術家」であったのか、多分そのどちらでもあったのであろう。


(2006/11/25)
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