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  古代エジプトの謎: その1

2011年開館予定の「大エジプト博物館」は、完成の暁には世界トップクラスの博物館となることが期待されている。

この博物館の建設事業に携わり始めて約10ヶ月近くが経過したけど、プロジェクトに参加し始めた頃から一貫して抱いている疑問がある・・「古代エジプトは何故これだけの『精神世界』を描きだすことが出来たのだろう?」…神殿、王墓、お棺、ミイラ、彫像、レリーフ、壁画、神話、さらには「死者の書」まで、他の古代文明に比べると、比較にならないくらい高度で深遠な「精神世界」を古代エジプト文明は包み込み、描き出している。

 
学校で習う世界史は、世界最古の「四大文明」で始まるのが普通である・・チグリス・ユーフラテス川流域の「古代バビロニア文明」、インダス川流域の「古代インダス文明」、黄河流域の「古代中国文明」、そして、ナイル川流域の「古代エジプト文明」である。

「古代バビロニア文明」は、世界最初の「都市文明」を生み出した(農業の起源については諸説あるので、ここでは問わない)、「古代インダス文明」は、現代の最先端の都市でもかなわないくらいの「都市下水溝ネットワーク」を構築した、「古代中国文明」は、長い時間をかけて「万里の長城」を建設した。

それらのどれもが、社会学的に画期的なものであったり、実用的に秀逸なものであったりするけど、「古代エジプト文明」が残してくれたような「精神世界」を感じさせるものではない・・ピラミッドやスフィンクスも凄いけれど、「古代エジプト文明」の全体像の中では、「ワン・オブ・ゼム」にしか過ぎない。

「古代エジプト文明」が、肌の白いセム語族系の人たちによって構築されたのか、サハラやスーダンを起源とする肌の黒い人たちによって構築されたのか、等々についての論議も賑やかだけど、僕自身は、「起源も非常に重要なテーマだけど、それはまずさて置いて、到達した結果の水準や内容も最大のミステリーではないか」と考えている。

「大エジプト博物館」に携わり始める3年以上も前から「ヨルダン国立博物館」の建設事業に携わってきている。「ヨルダン国立博物館」が対象とする時間領域は短くても約2万年前から、少しスパンを広げると、約4万年前からであり、「大エジプト博物館」の「時間領域=約5千年前から」は、あまりにも短いはずなのに、「ヨルダン国立博物館」が対象としている「古代文明」は、「大エジプト博物館」が対象としている「精神世界」に到達し得なかった、あるいは、到達し得たにしてもその痕跡を残さなかった。

時間的な熟成度や、社会的・実用的な達成度では、「古代エジプト文明」は他の古代(超古代も含む)の文明には敵わないところも沢山あるのに、何故、あれだけの「精神世界」に踏み込むことが出来たのだろう?

連続したシリーズとしてではなく、折をみて立ち返ってみたいテーマとして、「古代エジプトの謎」を解きほぐしてみたい・・僕には到底無理な課題かもしれないけど。

添付した図版は、「古代インダス文明」が残した数多くの粘土板の一つである・・「古代インダス文字」は解読されていない文字の一つで(ヒエログリフはシャンポリオンによって解読されたというのに)、もし解読されれば、「古代エジプト文明」にも匹敵するだけでなく、凌駕するかもしれない「精神世界物語」を紐解いてくれるかもしれない、と期待している。

(2006/6/25)
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