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 G8サミット

アフリカ諸国への支援を倍増することやパレスチナに10億ドルの支援を追加することを共同宣言して、スコットランドで開かれていた「G8サミット」は先日終了した。

交通・水道・電力などの社会基盤の整備、生産・流通・消費などの経済活動の活性化、教育・医療・福祉などの生活環境の充実・・これらの分野に対する支援活動が重要かつ緊急な課題であることに異論はないが、各種のODA (Official Development Assistance 政府開発支援)に実際に現場で携わった経験から判断すると、「本当にこれらの支援で、アフリカやパレスチナが蘇るのだろうか?」という素直な疑問をぬぐうことはできない。

日本を始めとする各国政府、世界銀行、アジア開発銀行、アフリカ開発銀行、国際連合の様々な組織などが、第二次世界大戦以降、いわゆる「開発途上国」に膨大な資金を投じて「支援」を行ってきているが、それらの支援を通じて開発途上国が「元気」になったという話はあまり聞いたことがない。

 

地震や津波などの自然災害や、飢饉や伝染病などの社会災害に対する緊急対処としては、支援はそれなりの効果を発揮するが、日常生活の質を向上させるといった持続的発展に対しては、支援は殆ど無力であったと言っても言い過ぎではない・・つまり、支援活動は「病気」を治すことはできても、「元気」にすることはできなかった(今後もできないだろう)ということである。

「CNN」と並んで世界をカバーしている国際放送「BBC World」の人気番組の一つに、「QUESTION」という視聴者参加型の討論番組があるが、G8サミットの共同宣言を受けて、アフリカをテーマにしたスタジオ討論会が先日放映されていた。
「アフリカは貧しくないからこそ、先進国が相変わらず収奪を続けているのではないか?」などという鋭い意見に混じって、ひとりの参加者から「アジアは何とかかんとか自分で発展してきているのに、何故アフリカは他人に頼らなければいけないのだろう?」という疑問が提示されて、ひとしきり侃々諤々の討論が繰り広げられたが、明快な結論には到達しなかった。

僕の古い友人の一人に脳外科医がいるが、彼がかつて僕に次のように話してくれたことがある・・「自殺を試みた患者の手術結果は絶望的でね、縫い合わせた患部が一向にくっ付こうとはしないんだ。生きる意志のない人間の生体は事実上死んだも同然だとしか思えない…」

災害という病気を外部から手助けして一時的に治すことはある程度できるかもしれないが、元気になるには「元気になろう」という自己決意が必要不可欠だということを暗示しているのではないだろうか?

自己決意をしていくためには、「自分は何であるか」という自己確認(アイデンティティ)が重要な前提となるが、その自己確認をする後ろ盾となる貴重な鍵のひとつが「文化」であり、それを体現した「文化財」なのである。

アフリカやアジア(例えばパレスチナ)の人々のアイデンティティを象徴する文化財を、勝手に自分たちの「至宝」として抱え込んでいて、それらの国々や地域からの返還要求に全く答えようとしないG8の国々が「支援」を倍増させても追加させても、支援を受けた国々や地域が元気になる、つまり「誇りを持って自力で自分達を発展させていく」ことは不可能であることは、誰の眼にも明らかであろう・・他のG8諸国に比べて略奪した文化財の数が桁外れに少ないからといって、日本が免罪になるわけでもない。

このテーマはもっともっと語られるべきであり、今日の話で事が済むとは決して思っていないが、まず「問題提起」だけはしておきたいと考えて、あえて拙速な論を展開した・・ちなみに、現在携わっているヨルダンの国立博物館建設プロジェクトも日本政府による「ODA」のひとつである。

(2005/7/14)
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